3417.読んでいない本について堂々と語る方法(ちくま学芸文庫)


オススメする人
塚田優様(評論家)

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なにしろ情報が多い世の中である。ひとたびSNSを開けば世界中で喧々諤々、オピニオンが濁流のように流れ込んでくる。デジタルデトックスによって心身に対する負担を管理するよう現代の識者は言うだろう。しかしだからといって、そのような切断ばかりでは世の中のありようを単純化しすぎてしまうのではないだろうか。

同書は「知っている/知っていない」という両極に、本をモチーフにしながらグラデーションを作り出す。「読んでいない」にもいろいろあって、ざっと読んだだけ、人から聞いた、読んだけど忘れたといった諸状態に対する記述は、知らないことに目を向けさせ、逆説的に何を知っているのかということを浮き彫りにする。こうした自覚によって、私たちは持っている情報を客観的に把握し直すことができるだろう。

こうした考えは、本だけではなくありとあらゆることに応用できそうだ。つまり同書は、この情報化社会に対する「処方箋」としても読めるのである。

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著者などの情報
ピエール・バイヤール
大浦 康介 (訳)

更新日
08/20/2023