クボ桂汰

892.私たちが好きだったこと(新潮文庫)


オススメするコメント
「どんなことがあっても、静かに、しのぐんだ。そしたら、時が解決する」
主人公・与志の親友ロバは、そう言った後さらにこう続けます。
      
「何かの映画のセリフに、時は、解決してくれるんじゃない。
時は、忘れさせてくれるんだってのがあったけど、
俺は、時ってのは、忘れさせてくれる力も持つと同時に、
やっぱり、何かを解決する力を持っているって思うんだ」
       
大切な人との別れは、時を経ても忘れることは出来ません。
むしろ時と共に鮮明に、心の奥深くへと生き続けていきます。
だからこそ、愛する人との別れに潔く立ち向かっていく姿は、
切なくて、哀しくて、優しくて、心に痛みを感じます。
       
「どんなことがあっても、静かに、しのぐんだ」
その潔い決意が、静かな勇気を与えてくれる物語です。

893.プラネタリウムのふたご(講談社文庫)


オススメするコメント
枯れはてた井戸のように虚無的な目をした少年”栓ぬき”に向かって、
双子のひとりであるタットルはこう言います。

「そしてね、どうしようもなくでたらめな、ひどすぎるような出来事にあったときは、
いいか栓ぬき、水を見るんだ。

小川のきらめくせせらぎ、窓をたたく雨粒、
噴水のまきあげる光の粒を見るんだ。
ぼくはまちがいなく、そこにいるからね」

「もし、泣いている誰かが、きみの前にいたとすれば、
ぼくは、そのひとの目からきみを見ている。

かすかに光る水滴のなかで、
きみがその相手になにか話しかけるのを、
じっと待っている」

もう一人の自分ともいうべき双子の兄弟・テンペルを失ったタットル。
壮絶な闇に引き込まれ、虚無の世界に飲み込まれていきます。
絶望的なほどの喪失感と、そこからの蘇生。

それでも生きていこうと決めた者の覚悟が、心を打ちます。

オススメ人の情報
WEB
http://www.geocities.jp/kubokeitata/