893.プラネタリウムのふたご(講談社文庫)

オススメする人
クボ桂汰様(イラストレーター)

オススメするコメント
枯れはてた井戸のように虚無的な目をした少年”栓ぬき”に向かって、
双子のひとりであるタットルはこう言います。

「そしてね、どうしようもなくでたらめな、ひどすぎるような出来事にあったときは、
いいか栓ぬき、水を見るんだ。

小川のきらめくせせらぎ、窓をたたく雨粒、
噴水のまきあげる光の粒を見るんだ。
ぼくはまちがいなく、そこにいるからね」

「もし、泣いている誰かが、きみの前にいたとすれば、
ぼくは、そのひとの目からきみを見ている。

かすかに光る水滴のなかで、
きみがその相手になにか話しかけるのを、
じっと待っている」

もう一人の自分ともいうべき双子の兄弟・テンペルを失ったタットル。
壮絶な闇に引き込まれ、虚無の世界に飲み込まれていきます。
絶望的なほどの喪失感と、そこからの蘇生。

それでも生きていこうと決めた者の覚悟が、心を打ちます。

オススメ人の情報
WEB
http://www.geocities.jp/kubokeitata/

著者などの情報
いしいしんじ

更新日
04/08/2015