加藤マニ

776.新解さんの謎(文春文庫)

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「元気になる本」というテーマを頂いた後に書棚を眺めてみても、とんと元気になる本が見当たらず、というのも、恐らくわたしにとって本を読むということは、元気になりたいからではないらしく、どちらかというと読中の驚きと興奮、読後に授かるちょっとした重量感をもつ闇、それによって得られる疲労感と充実感、が目的として大きいのだと改めて感じました。
特にフィクション作品に対しては益々この傾向が強いため、選書は赤瀬川原平さんのエッセイとします。本来なら一般的な表現に留めた特段面白くもない「国語辞書の用例文」ながら、こと三省堂発行の『新明解国語辞典』における、異様にアクが強い解釈、そしてストーリー性すら感じさせる独特すぎる用例に、もはや辞書自体にひとつの人格があるような、曰く、魚が好きで苦労人、女に厳しく金はない、そんな架空の人物像「新解さん」へ軽妙に迫ってゆきます。
どんな本であれ、さあ元気になるぞォ!として読むと、どうしても肩肘張ってしまうものですが、どちらかと言うと無意識のままで読後にちょっと体が軽くなるような、気付いたら、何だか心持ちが晴れているような、いないような。くらいがわたしにとって丁度良い「元気になる本」のようです。

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