江森丈晃

777.OVERPAINTED PHOTOGRAPHS(HATJE CANTZ VERLAG)


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選書のお題が大海原すぎるので少し悩みました。
でも、活字が入ってこないほど疲れている自分を想像したら、この画集になりました。
リヒターはたくさんの作風を持つドレスデン出身の巨匠ですが、この作品集に収められた「Overpainted Photographs」は、スナップを下地にしたペインティングのシリーズです。
たとえば、赤や青の隙間から覗くフィレンツェの人ごみ。紫の雨に壊れゆくピサの斜塔。ここには「写真+油彩」という技法で描かれた作品ばかりが並んでいます。
意識の継ぎ目に染み入る爛然……水晶体泣かせの奥ゆき……ダムのヘリに立つことにも似た畏怖……ここから受け取る「非日常」を文章で伝えるのはなかなかに難しいのですが、無論、この本を選んだ理由は「活字が面倒」なだけではありません。
それは、思いつきさえすれば自分でもできたであろう「発明」の眩しさに、腹の底からヤル気になるためです。 

778.恋愛の解体と北区の滅亡(講談社)


オススメするコメント
もう一冊は短くてすぐ読み切れる小説を選びました。会話や改行が多めです。
宇宙人に攻撃されて北区がなくなるかも、という荒唐無稽な設定ですが、地上の人間の生活は、相も変わらず。夜を歩く主人公と(彼にスクール水着をきせたりする)風俗嬢のやりとりというのが、体臭たっぷりでよいのです。

「記者会見見ないつもりだったんですか?」
「ああ宇宙人のやつ」
「うん」
「明日またテレビで何度もやるでしょ? どうせ」

自分はこれで元気が出るのですが、世間的にはどうなんでしょう。

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WEB
http://www.tonetwilight.com/